ストーリーは単純なのになぜかどの話も新鮮に感じられる不思議な短編集『ザ・ベスト・オブ・サキ』

『ザ・ベスト・オブ・サキ』は、最近バッグによく忍ばせている短編集。

短編集はちょっとした空き時間にさらっと読むことができて重宝します。

でも、ミスチルのライブに持って行ったら、恋人から「何しに来てん!」と突っ込まれました。

私的には行き帰りの電車の中やライブが始まるまでの間に役立つと思ったんですけど、結局一回も開かなかったという(そうやって無駄に荷物を増やして彼に押しつけるという悪女っぷり)

 

 

日本女性っぽい名前ですが、イギリスで活躍していた小説家(♂)です。

日本だとよくあるけど、海外でファストネーム(?)のみで活動している作家って珍しいので、外国文学コーナーに並んでいると目立つんですよね。

そんな単純な理由で手に取ってみたら、私の創作意欲を刺激してくれそうな言葉が並んでいたので、とりあえずお持ち帰りしてみたら、これがけっこうおもしろくて!

 

 

無駄な装飾が抑制されていてシンプルな文体。特別難しい言葉は使われていないんだけど、単語の組み合わせを工夫することで表現に奥行きを持たせているような、そんな文章が印象的でした。

 

ユダヤ人がテーマになっている『魔法の樽 他十二篇 (岩波文庫)』(シリアスなテーマだけどユーモアが効いていておもしろく、時に爆笑させてくれます)も、似たような文体だったと思います。

 

 

内容も面白くて、たとえば 『女性は買物をするか』では、「女性は毎日のように買い物に出かけるのに、なぜ必要なものを切らしてしまうのか」といったテーマが扱われています。

「木曜までに洗濯のりが切れますわ」とおおよその期限を把握しているにもかかわらず、きっちり木曜日に洗濯のりを切らしてしまう女性。近所の店で買えばいいのに、「あの店では買いませんの」などとのたまって、でもいつも買う店は今日休みだから買えないというわけです。

ごく身近なテーマだけど、女の私としては「あるある」と頷いてしまう内容で、かつ男性の「なんでやねん!」というツッコミも的確すぎて笑えました。

 

 

他にも、ちょっとぞっとする少年の話や、日常に溶け込みすぎている呪いの話など、ワクワクする作品が詰まっています。

オチやストーリーに特別ひねりがあるわけでもないのに(むしろ単純な作りの話が多い)、なぜかどの話も新鮮に感じられる不思議。

しばらく私の研究対象になりそうな予感です。