毒薬にまつわるリアルなストーリーが豊富な『毒薬の手帖』(毒薬の手帖)
毒薬という言葉の甘美さに惹かれて手に取った『毒薬の手帖』。
古代から順に毒薬の歴史を丁寧にたどっていく本です。
毒に関する本はこれまでにもいろいろ開いたことがあるんですけど(開いただけっていう笑)、ここまで夢中になれたのはこの本が初めてでした。
最初、図書館で澁澤龍彦(シブサワって読みます。難しいですよね笑)全集なるものを借りたんですけど、その中に収録されていた本書が気に入ったので、amazonで中古本を注文しました。
なんでこんなに興味を惹かれるのか考えてみたんですけど、たぶん、毒薬にまつわるリアルなストーリーが魅力的なんだと思います。
まだ最後まで読み通せてないんですけど、特に印象的だったのはソクラテスが毒ニンジンを飲んで息を引き取るまでをプラトンが観察して記録した文章です。(それ自体は別の本からの引用なんですけどね笑)
毒ニンジンは麻痺性の毒を持つんですけど、それを服毒して横たわるソクラテスの足を押してプラトンが「感覚はあるか」と訊ねます。
すると、「ない」という答えが返ってくる。
麻痺は足先から上に向かって進行していくので、プラトンもそれを追いかけるように感覚の有無を確認していきます。
で、そのあとにこんな文が続きます。
そして、もう一度さわってみてから、これが心臓まできたらこの世を去るのだと教えました。
読んでいるうちに、人はこんなにも冷静に死と向き合うことができるのか、これが哲学を究めた者の姿なのか、と神聖なものを見つめている気持ちにさせられました。
こういう感じで、様々なストーリーが集められているので、毒に興味をお持ちの方にはたまらん一冊かと!
以前、試し読みで『毒姫 1 (朝日コミック文庫) (朝日コミック文庫 み 25-1)』という漫画を読んだことがあるんですけど、この漫画の設定の元になったんじゃないかなという話もありました。
幼いころから微量の毒を摂取し続けることで、体液に毒を含むようになるらしいんですけど、『毒姫』はそうやって育てられた美しい女たちが刺客として敵の城へ送り込まれる話です。(たぶん)
設定自体は創作だと思っていたら、どうやら本当みたいで、それを知った途端に漫画への興味が強くなりました。
そんなわけで、『毒薬の手帖』 の紹介でした。
昔に書かれた本だけど読みやすいですよ!