不気味な蟹の幻覚から逃げてきた一花が迷い込んだのは……加藤元『山姫抄』

姫というメルヘンチックな言葉と表紙のイラストの可愛さに惹かれて、いわゆるジャケ買い(正確にはジャケ借り)した本。加藤元さんのことはこの作品で知りました。

日本に実際に伝わる『山姫伝説』をベースに、ある田舎町から消えた女たちの謎を追っていく……かんたんに説明すると、こんな感じのストーリーです。

民俗学ネタにテンションが上がる人は気に入ること間違いなし!

 

この小説は冒頭から不穏な雰囲気に包まれています。

幻覚の黒い蟹から逃げてきた一花(いちか)が、ド田舎に住むんでいる智顕(ともあき)の家に引っ越してくるシーンから始めまるんですけど……この男、実は既婚者で、しかも妻の姿子(しなこ)は失踪しているんです。

もう、登場シーンから危険なニオイしかしません。

 

 

性格も何か爆弾を抱えているようなところがあって、一見堂々として見える一花の振る舞いの中にもいくらか緊張感が混じっています。それが、読んでいるこちらにまで伝染してきました。

閉鎖的な二人の奇妙な同棲生活はどんどん煮詰っていき、それと平行するように智顕の一族の後ろ暗い過去も明らかになっていきます。

さらに、姿子の失踪事件を追う男の存在や、他にも失踪した女がいること、過去に起こった殺人事件などが発覚していき……。

 

消えた女たちは本当に山姫になったのか?

それとも、何者かによって殺されてしまったのか?

そして、智顕は姿子を殺したのか?

 

ミステリー慣れしている私でも最後まで予測のつかない展開でした。

それ以上に心を奪われたのは、智顕が持つ強い陰の魅力。

一度足を踏み入れれば、二度とこちら側には戻ってこられない。それがわかっていても彼に愛されてみたいと願ってしまったのは、読書中、一花と完全に同化していたせいでしょう。

あなたも、この本を手に取る際は気をつけて下さいね。

次に山姫として白羽の矢を立てられるのは、あなたかもしれないのですから。

 

……なんちって(テヘペロ

 

読み終えたのが何週間も前なので、あやふやな記憶とメモを頼りに書きました。(2017/4/14時点での話)

なので、ストーリー自体に間違っている部分があるかもしれませんが(え)、ご了承を。
Janne Da Arcというバンドの、女の子がかわいそうな感じの曲(なんちゅう紹介や)や、桜庭一樹さんの『私の男』が好きな人は、絶対この作品にもハマると思います。