噂の『国語入試問題必勝法』はとんでもない型破り小説だった!
ネットで思いっきり笑える小説を探していたところ、いろいろなサイトで『国語入試問題必勝法』(清水義範 著 / 講談社)が取り上げられていました。
サイト上にある感想は「電車の中で読んではいけない」「抱腹絶倒すること間違いなし」というような内容ばかりでどんな物語なのかわからなかったのですが、気になったのでとりあえず読んでみることに……。
『国語入試問題必勝法』を習得した受験生の悲劇とは?
受験生の浅香一郎が月坂という家庭教師に国語問題の解き方を教えてもらうというストーリー。
この月坂、序盤から「時間制限があるのにややこしい問題文を読んでいる余裕はない」「文章を理解したところで何の役にも立たない」と言ってのけます。
そこから問題文を読まずに答えを導き出す必勝法を伝授していくわけなのですが、これがすごいんですよ。 「学生時代にこの本と出会いたかった」と思いました。
さて、浅香は月坂のおかげで国語の問題が得意になっていくわけですが、その結果まともな国語力が失われていき、最後には……。
これ以上書くと読者の楽しみを奪うことになっちゃうのでやめておきますね。とにかく、ラストで大爆笑させてくれます。
日本の国語教育に対するアイロニーを交えたユーモラスな作品でした。
読んでいるこっちが悪夢だよ! 『霧の中の終章』
息子の嫁が朝食を用意してくれないことに不満を覚えている老人視点で物語は進んでいきます。
あれやこれやと考えるうちに怒りが沸点に達した老人は、嫁を呼びつけて「一体いつになったら朝ごはんを食べさせてくれるのかね?」と嫌味をぶつけます。
すると、嫁がおどろいた顔でひとこと「さっき食べたばかりじゃありませんか」と。
通常ならば、ここから病院に連れて行ったり、介護の問題に悩まされたりといった展開になりそうですが、この物語はとんでもない無間地獄に突入します。
読んでいるうちにこっちまで頭がおかしくなりそうな作品でした(笑)
老人がリレー小説を書くとこうなる! ? 『人間の風景』
いやー、老人ってほんとおもしろい!
この作品ではオーバー70歳のご老人たちが大活躍します。
今度は彼らのリレー小説を読むという形で物語が進んでいくんですが、小説を書いたことのない素人が書く小説ですから無茶苦茶です。それでいて、「なるほどそうきたか!」と納得させられるズレ方を見せてくれたりします。
とんでも展開を披露する大手製鉄会社の元部長、すぐに心が折れるおじいちゃん、次の書き手に繋がなくてはならないのに小説自体を終わらせてしまった警察官、いい意味で期待を裏切ってくれる元新聞記者と、個性豊かな書き手たちが完成させた作品とはいかに!?
フリーダムすぎて逆に才能を感じさせられました。彼らにはどんどん新しい作品を書いてもらいたいです。
あとがきにも遊び心が満載!
やれやれ、笑い倒したぜー、と気を抜いてあとがきを読み始めたら、書き出しからやられてしまいました。
初っ端で、国語入試の本だと思って購入した受験生に向けて「まぎらわしい題名の本を出してごめんなさい」と謝っているのですが……。
そんな人いるのかと思ったら、前に出した短編集「蕎麦ときしめん」が多くの書店で料理本コーナーに並べられていたという前歴があり、今回も受験参考書のコーナーに置かれることを懸念しているとのこと。
「謝ってはいるけど、本当はおもしろがって意図的にそういうタイトルにつけたんじゃ?」なんて想像しながら読むと、ニヤニヤしちゃいますね。
あと、わたしのような純粋な読者は、このあとがきを読んである部分にショックを受けると思います。
それが何なのかは読んでからのお楽しみということで!
まとめ
ユーモアセンスがこれでもかというくらいに詰め込まれた短編集で、書き手として学ぶことも多かったです。 「わたしはこっちを目指した方がいい!」と直感的に感じました。
次は『蕎麦ときしめん』を読んでみようと思います。