紀凜さんの心屋上級ワークショップを受けて半年が経過したいま思うこと(前編)
今年の一月の終わりに、紀凛さんの心屋上級ワークショップに参加してきた。
知らない人のためにさらっと説明すると、心屋上級ワークショップでは二日かけて、同じグループになった四人くらいの人の前で、これでもかというくらい「ありのままの自分」、これまで必死に隠してきた自分をさらけ出す作業を行う。
心屋仁之助さんのホームページの説明によると、『コミュニケーションが苦手な人のための最終兵器』だ。
人間関係に悩んでひきこもりをしていた時期、母から「苦手なこと=興味対象」という話を聞いたことがある。何かの本に書かれてあったらしい。
そのときは腑に落ちなかったけど、今になって、なるほどその通りだなと実感している。
それまでも、それからも、私はずっと「コミュニケーション」について考え続けてきた。「どうやったらみんなに嫌われないのか」から始まり、本で読んだ「雑談術」をそのまま実行して変なことになったり(これについては小説として発表したいです笑)しながら、最終的に「どうやったら自分を保ったまま人の輪の中に入ることができるのか」に行きついた。
上級ワークショップを受けるころには、コミュニケーションに対する苦手意識はあまり感じなくなっており、「得意ではないけど困ってもいない」という状態だった。
だから、行っても劇的な変化が望めるとは思えなかった。
そんなわけで、行くか行かないか何か月も悩んだのだが、「上級ワークショップ」という文字を目にするたびに興味が湧いてしまうので、「これは行かない限り延々と悩み続けるだろう」と観念して参加を決意したのである。
実際に上級ワークショップを受けてみると、なんていうか、いろんな意味で想像以上だった。ものすごく怖い体験をしてもらうって書いてあったから、それを楽しみにしていたのに、前半ふつうに楽しくて「私、こんなに平気ってことは、あんまり効果出ないんじゃないか」と不安になった。
ところが、「グループで昼ごはんを食べに行く」というワーク中に、一気に流れを変えてしまう事件が起こった。
事件といっても大したことではないのだけど、店を決める段階で、ちょっと嫌な思いをしたのだ。
私は食事制限と煙草アレルギーのせいで、入れるお店が限られている。だから、誰かと食事をする場合は、事前に店を決めて予約するようにしていた。
初対面の人とその場の流れでご飯を食べに行くなんてあり得なかった。
でも、そのときは、まったく問題ないはずだった。
メンバーの人たちに事情を話すと、「じゃあ、あなたが入りたい店に入ろう」と言ってくれたし、以前も同じ場所で同じワークをしたことがあったので(心屋初級コース)、入る店にも検討をつけていたのだ。
私はみんなを連れてその店があったはずの場所へ向かった。
ところが……
店が見つからないのである。
案内図を眺めてみたり、あたりをうろついてみたりしたけど、どこを探しても見つからない。ひとりならすべての階をぐるぐる回って探すけど、みんなを連れて時間のない状況で、しかも決定権が自分にある状況でそれをすることもできず……。
他の店を探そうにも、どこから選べばいいのかわからない。パネルを見ても、禁煙席があるのかまでは書かれていないから選びようがないのだ。
時間がある中ならネットで適切な店を探す自信があったが、頭がパニックを起こしていて、どのキーワードで検索すればいいのかすらわからない。
その状況で、短気なあの方が、「とにかく早く決めて店に入ろう」と急かしてくる。
……もう、無理だ。
スコーンと頭が白紙になった私は、あろうことか、短気な彼女に助けを求めてしまった。
「どうしよう、どうしたらいい?(泣)」
今ならわかる、
「パネルを見ても禁煙席があるかわからないから、歩きながら探すか、ネットでこの場所にある店を見たいんだけど、みんな歩かせても大丈夫? ネットの方がよかったら、この場所の店を検索する方法がわからないから、誰か手伝って下さい」
と、状況と何で困っているのかを説明して、具体的な助けを求めればよかったのだ。
しかし、混乱して頭がフリーズしてしまっている私にそんな能力はない!!!!
しかも、助けを求めた相手は自分で短気を認識している女性。
「あなたが決めないと、私たちはわからないよ!」
彼女は至極まっとうなことをふつうの口調で言ったのかもしれないけど、私はブチギレられたくらいの感覚で受け取ってしまい、泣きそうになった。
周りの友だちは穏やかで面倒見のいい人が多いので、そんな思いをしたのは本当に久しぶりだった。数年ぶりくらいだったんじゃないだろうか。
結局、別のメンバーが「ここ美味しそう! ここは入れない?」って聞いてくれたおかげで店が決まり、緊迫した雰囲気もおさまり、事なきを得たのだけど……。(彼女がよだれを垂らした天使に見えた)
(後編に続く)